いま、葉っぱは目を閉じています#
机の上で、葉っぱにアルミホイルのカバーがかぶさっていますね。
あれで葉っぱを真っ暗にして、光合成の準備をいったんリセットしている時間です(暗順応といいます)。数分かかります。その間に、これから測る数字の話を読んでみてください。

【クイズ】お風呂より熱い45℃#
お風呂より熱い45℃のお湯に、コマツナの葉を5分間つけました。
この葉の「光合成の元気度」は、どうなっていると思いますか?
- ちょっと下がる
- ほとんど変わらない
- びっくりするほど下がる
顔を上げる前に、心の中でひとつ選んでおいてください。
机の上の装置が測っているもの#
いま使っているのは JUNIOR-PAM という、クロロフィル蛍光を測る装置です。スマホぐらいの大きさなのに、50万円以上します。

この装置が捉えているのは、葉っぱが出している**目に見えないほどかすかな光(蛍光)**です。
葉っぱが吸い込んだ光エネルギーの行き先は、大きく3つに分かれます。
- 光合成に使う(ほとんどはこれ)
- 熱として逃がす
- 蛍光として光り返す(ごくわずか。装置が測るのはこれ)
この3つはシーソーのようにバランスを取り合っていて、光合成がうまく回らなくなると、その分だけ蛍光が増えます。だから、かすかな蛍光を測るだけで、葉っぱを1枚もちぎらずに光合成の調子がわかるのです。

Fv/Fm = 光合成の「最大能力」#
暗順応させた葉に、まずごく弱い光を当てて蛍光を測ります(Fo)。続いて、まぶしい光を一瞬だけ浴びせて、そのとき出る最大の蛍光を測ります(Fm)。
この2つから計算する Fv/Fm が、光合成の最大能力を表す数字です。
数字の読み方#
| Fv/Fm | 葉っぱの状態 |
|---|---|
| 0.8 前後 | 健康。光合成の準備は万全 |
| 0.6 〜 0.7 | 乾燥ぎみなど、何かストレスを受けている |
| それより低い | 光合成の仕組みそのものが傷んでいる |
見た目にはまだ青々としている葉でも、この数字は先に下がります。人間でいえば体温計のようなもので、顔色ではわからない不調を数字が先に教えてくれるのです。
だからクイズの葉も、見た目だけで判断すると、たぶん外れます。
答え合わせは、目の前の装置で#
さて、クイズの正解は――ここには書きません。
このクイズは、岩手大学農学部の3年生が受ける実験(食産業システム学実験II)でも出しています。ここで答えを書いてしまうと、これから実験する学生の楽しみを奪ってしまうので、正解は伏せておきます。
かわりに、あなたの目の前に装置があります。
①②③のどれかを決めたら、顔を上げてスタッフに声をかけてください。ホイルを外して測れば、数秒で数字が出ます。上の表と見比べれば、その葉っぱが元気なのかどうか、自分で判定できます。
予想は当たっていましたか?
もっと知りたくなった人へ#
- 原理をきちんと知りたい → クロロフィル蛍光Fv/Fmによる植物ストレス診断の原理 (図解つき)
- 研究室で何をやっているのか → 高校生の皆さんへ:未来の農業をのぞいてみよう!
- 動いているところを見たい → Instagram @uzukilab に、このクイズの実験の様子を動画で載せています
- 自分で測ってみたい → 岩手大学農学部の実験では、この装置を学生が自分の手で操作します。操作はとても簡単です
私たちの研究室(栽培施設学研究室)では、植物が言葉にできない「調子」を、光や水の動きから読み取る研究をしています。今日の数字も、その入り口のひとつです。